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「エモい」を再構築する|フィルムライク映像の設計|CHARMERA × MacBook Neo × Final Cut Pro × Dehancer

もくじ

1. はじめに

なぜ、フィルムはエモいのか?

あの日みた夕陽。

もはや、自分の記憶じゃなくてもいい。

誰かの記憶が補完される。

昭和から平成の空気感。

息苦しくなって、吐いた息が吸えなくなるような胸苦しさ。

フィルムは、その記憶に最も近い。

つまり、エモい。

2. 「エモい」の社会的な背景

「エモい」は主体的で内面的な表現です。

対象がどうであれ、自分はそう思ったと噛み締めているだけで、内面に向いています。

それが良いか悪いかなど、どちらかのイデオロギーの選択をしないで、「エモい」という感覚や色調、空気感に対する、ゆるい共感です。

SNSにおいて、どんなに当たり障りのない投稿でも、拡散されることで必ずクソリプがつく法則があります。

そういったクソリプがつかないためにも、「エモい」は時代が必要とした、緩衝材として非常に優れている、必然的な言葉だったのかもしれません。

3. 平安時代からあった言葉

調べていくと、「エモい」のような言葉は、昔からあったようです。

平安貴族にとってのSNSである「和歌」には、月や夕陽を見て感じる言葉として「あはれなり」「もののあはれ」「えもいわれぬ」がでてきます。

たとえば「えもいわれぬ」は、何も言っておらず、主体的で内面的な表現です。もはや、略して「エモい」と言っていたのではないかと疑うくらいに似ています。

きっと1,000年前から変わっていない感覚があって、現代と同じく、自分の和歌にクソリプがつかないためにも、「えもいわれぬ」という言葉が流行っていたのかも知れません。

4. 「エモい」を抽象化して言語化する

「エモい」と感じられるものから共通点を見つけて、抽象化して言語化します。

4-1. 抽象化する

まずは抽象化して、3つの軸を作ります。

4-1-1. 過ぎ去った時間

過ぎ去った時間は二度と戻らないこと。永遠には続かず、いつか終わりがくることを知っている感覚。

4-1-2. ノスタルジー

現在なのに、過去のものとしてみる、すでに思い出であるかのように見る視点。

4-1-3. 記憶の補完

ストーリーに余白があることで、受け取る側が記憶を補完して、感情を増幅させる。

4-2. 抽象化のまとめ

これらの条件がそろったときに、「エモい」感情のスイッチが押されます。

多くの場合、感情は自分の経験から補完されるものですが、「エモい」という感情は、初めての経験でも成立します。

昭和や平成の時代をリアルタイムで知らなくても、昭和レトロ、平成レトロは「あー、なんかこういう感じね、エモい」となります。

4-3. 具体化する

抽象化した「エモい」からエッセンスを抽出して、ここから具体化していきます。

4-3-1. 過ぎ去った時間

  • 子供の頃の記憶にある「逆光とシルエット」
  • あの場所で見た、哀愁を感じる「夕焼けの時間」
  • 色褪せたノスタルジーを感じる「露出オーバーのハイライト」

4-3-2. ノスタルジー

  • 過ぎ去った時間のあいまいな「低い解像度」
  • 悲哀(ひあい)と寂寥感(せきりょうかん)の「ノイズ」
  • 色褪せた「ずれた色温度」

4-3-3. 記憶の補完

  • ストーリーとしてすべてを映さない「情報の足りなさ」
  • 前後を説明しない不完全な「文脈」
  • 考察から生まれる「脱構築」

「エモい」とは、情報を削ぎ落として、時間を歪めて、記憶を呼び出すスイッチです。

5. KODAK CHARMERA

「エモい」は、具体的な行動となってあらわれることもあります。

「AE(Analog & Emotional)消費」と呼ばれる、「エモい」商品やアナログ、Lo-Fiなアイテムを手にすることです。

これは、KODAKのCHARMERAというトイカメラです。エモい写真と動画が撮れます。

「エモい」をビジュアル化するために、今回はCHARMERAを使います。

6. Dehancerでフィルムの質感

フィルムは、過去の技術ではなく、新しい表現手段として再評価されています。

フィルムから生まれる価値は、懐かしさではなく、人の記憶に近い表現にあるのだと思います。

「Dehancer」は、Final Cut Pro、DaVinci Resolve、Premiere Proなどで使える、フィルムのような質感や色味を表現する、フィルムライクなカラーグレーディングのためのプラグインです。

「エモい」をビジュアル化するために、今回はDehancerを使います。

さらに、「エモい」MacBook Neoを使って、「エモい」CHARMERAで撮った動画を、Final Cut ProのDehancerで「エモい」感じにしていきます。

Final Cut Proでライブラリを作成して、CHARMERAで撮影した動画を、イベントに読み込みます。

「プロジェクトを作成」からプロジェクト名を入力します。

作成したプロジェクトに、クリップを配置します。

次に、メニューバーの「編集」から「調整クリップを追加」を選択します。ショートカットは⌥Option + Aです。

全体にDehancerのエフェクトをかけたいので、調整クリップを伸ばします。

これからDehancerで色調整を行っていくために、全体のリファレンスとなりそうな部分を表示します。

この夕陽の色を見ながら調整していくことにします。

最初に、FilmのProfileから、おもいきってフィルムを変更します。

次に、PrintのProfileから「Kodak 2383 Print Film」を選択します。

この、FilmとPrintのProfileの設定で、だいたいの方向性が決まるので、最初にこの2つを設定するのがおすすめです。

あとは、それ以外の設定を調整していきます。

7. さいごに

情報を削ぎ落として、精度を落とした、不完全な文脈。

それでも何か伝わるものが、「エモい」の中に残っているのは、無意識下で感じ取っているものがあるのだと思います。

無意識下にある「エモい」、それこそが人間の感情の本質なのかも知れないな、と考えています。

8. 参考資料

「エモい」は現代版「あはれ」なのか:個人別態度構造分析に基づく検証|西南学院大学 機関リポジトリ

第49回 懸賞論文 受賞者 塩見 ありさ氏|JAAA 一般社団法人 日本広告業協会

情動を表現する切り口としての「エモい」―共感の氾濫するソーシャルメディアで― 浦野 智佳 p.13|Core Ethics vol.19|立命館大学大学院 先端総合学術研究科